• 生産技術

塗装について

仁張工作所の一貫生産体制の中でも、自社に塗装設備を保有していることは大きな特長です。ここでは、塗装の効果や当社の塗装設備についてご説明いたします。

1. 塗装の目的・特長

塗装の目的(期待される効果)は大きく次の3つに大別できます。

(1) 防錆(物の保護)

塗料は、物の表面に塗装すると丈夫な被膜となって物を保護します。鉄は、素地のままでは錆が発生し、物の劣化・損傷が発生、放置していると構造物の破壊や環境悪化等の重大な問題につながる可能性があります。ところが、塗装をすることによって、表面を保護し、物を何倍にも長持ちさせることができます。また塗装(塗料)は、補修、塗替えといった比較的簡便な方法で物の長期保護をすることができるのも特徴です。

(2) 装飾(物の美粧)

“物の美粧”はいろいろな手段で実現することができますが、塗装ほど豊かで多様な色彩、光沢、模様等自在な仕上がり感が簡便な方法で得られるものは他にありません。凹凸が表現できるハンマートン模様、光沢のあるメタリックカラーやステンレス材に施すクリア塗装などはその代表的なものです。

(3) 特別な機能の付与

塗装(塗料)は、物の表面の機能を色々と変えて物の価値を高めることができます。例えば、抗菌や防カビを目的とした抗菌塗料・電子機器等によく使用される防塵塗料などはその代表的なものといえます。最近では、病院・ホテル等でも使用される結露防止塗料の他、電磁波遮蔽、ガラス飛散防止、耐熱、防音等、様々な目的のための塗料も提供できるようになってきています。“物の保護・美粧”という面から見れば、塗装の特長(長所)としては、大きく以下のようなものが挙げられます。簡単に施工ができて色彩が豊富 物の形状や寸法、重量に変化を起こさせない 塗替え(修復)が比較的簡単 他に比べると設備が少なくてすみ、単価が安い

~コラム  『塗料より塗膜になるしくみ』 

 

塗料 ⇒ 塗装 ⇒ 乾燥(硬化) ⇒ 塗膜

【酸化乾燥型】・・・樹脂分が空気中の酸素を吸収して酸化することにより重合が起こり、網目構造を形成する。しかし、網目構造が粗いので塗膜性能はそれほどよくなく、また、網目構造が完成するまでに長時間かかるため、自動車用上塗りとしては使用されていないが、プライマーやサーフェイサーとしては、一部使用される場合がある。<油性調合ペイント・合成樹脂調合ペイント等>

【揮発(蒸発)乾燥型】・・・塗膜中の溶剤が蒸発して塗膜となるもので、樹脂分子の結合(網目)が起こらない。したがって、シンナーで拭くと塗膜は溶解する。一般には、ラッカー系塗料の乾燥機構である。 <ラッカーエナメル・塩化ビニル樹脂塗料等>

【重合乾燥型】・・・(当社での塗装はこれに該当します。)

(1)熱重合乾燥:ある温度(一般には120℃以上)に加熱することにより樹脂の反応(重合)が起こり、緻密な網目構造を作るため、塗膜性能は優れており、完全乾燥して網目構造が完成すると、溶剤(シンナー)に溶けなくなる。<アミノアルキド樹脂塗料(メラミン樹脂塗料)、アクリル樹脂塗料>

(2)2液重合乾燥:主剤(塗料ベース)と硬化剤(ハードナー)を混合することにより樹脂の反応(重合)が起こり、網目構造が形成される。この反応は常温でも進行するが、温度が上がると反応速度が速くなる。作業効率の面から通常は、40~80℃で強制乾燥を行う。尚、網目構造は熱重合タイプと同様に緻密なため塗膜性能は優れている。<エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料>

2. 当社の行う塗装について

以下、当社の塗装設備・特徴等について説明します。

(1)焼付塗装の工程・設備仕様について

*当社の塗装工程フローは以下の通りです。

着荷(ハンガー掛け)→ 予備脱脂(水洗) → 脱脂・化成皮膜(リン酸鉄) → 水洗(第1・第2・第3) → 水切乾燥 →   エアーブロー → 下塗塗装 →  上塗塗装 → セッチング → 焼付乾燥脱荷・検査

 

*当社のライン設備は以下のようになっています。

*被塗装物サイズ(最大)・・・幅1400mm または 奥行700mm または 高さ1800mm

*ラインの長さ ・・・約186m

*フック数  ・・・621(ピッチ300mm.)

*ラインスピード ・・・分速 1.5~1.8m

*ブース方向 ・・・1方向(塗装物を回転させる)

(2) その他

【*塗料の種類・塗装膜厚】・・・当社で使用する塗料の種類は、大きくメラミン樹脂塗料(アミノアルキド樹脂塗料)、アクリル樹脂塗料の2つであるが、その他にポリウレタン樹脂塗料なども使用します。大まかに言うと、屋内で使用するものにはメラミン系、屋外で使用するものにはアクリル系の塗料を採用します。塗装膜厚については、スチール家具の場合、狙いは“25~30μm”(タバコケースのフィルムが約20μmです)、膜厚の指定がない場合は22μm以上を確保します。

【*塗装色の特定】・・・ 通常、色の特定には“色”だけでなく“ツヤ(光沢度)”も必要です。色の特定については、日本塗料工業会(日塗工)の塗料用標準色見本帳で色番号とツヤの両方をご指定して頂くのが  適当です。他に、マンセル値での特定というのもありますが、マンセル記号だけでは、色の幅が広く特定化できないため、他に色見本(サンプル)が必要となってきます。

【*環境への配慮】・・・当社は“環境への取り組み”として以下データの収集、法律の遵守を実施しています。 

・MSDS(化学物質等安全データシート) ・PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律)

【*塗装見積の相場と塗装業者による違い】・・・スチール家具、精密板金分野における1㎡あたりの塗装単価は、@¥800~¥2,500/㎡と大きな幅があり、被塗装物の形状、大きさ、塗装ラインに適した大きさか等により、それ以上の金額が掛かる場合もあります。当社の場合においても、“ライン吊で塗装するか、立カマで対応するか”といった設備の選択や物の形状、要求される品質レベルなどによってその価格は変わってきます。その他、見積を左右する要因としては塗料の価格、膜厚、数量(ロット)などが挙げられます。